2016年3月26日
バスククリナリーセンター
サン・セバスチャン市の郊外に2011年9月に設立された、調理科学に重点を置いた4年制の大学。
このセンターのすごいところは、諮問機関として、グループG9と呼ばれる国際顧問委員会が設置されており、
委員長はスペインのカタルーニャの世界的に著名なレストラン、エル・ブジEl Bulliのフェラン・アドリアFerrán Adriá氏であること。
エル・ブジはご存知の方も多いと思いますが、今は閉店していますが、ミシュラン3つ星、世界一のレストランの称号を得、45席しかないシートに年間200万人もの予約希望が入ることで、世界一予約が取れないことでも有名なレストランです。
その他、美食に関して最も重要な国々9カ国のトップシェフ9人により構成されており、(日本人では服部幸應氏が参加されています。)
彼らのアドバイスを元にセンターの戦略が立てられます。
そんなクリナリーセンターへ、短期大学の食物コースを受講される生徒さん方をご案内させて頂きました。
研修を担当して下さったのは、かつて3つ星のアケラレで右腕として働いておられたエンリケさん。
現在はゲタリアで独立してレストランを経営されておられるそう。レッスン後もレストランの準備があるとおっしゃっておられました。
写真はパンをもって案内中のエンリケさんと通訳を担当するバスクスタッフの山口。
研修は、約3時間のデモンストレーション。
「バスク料理の今、昔を伝統料理から現代テクニックまで広く見聞を広めるコース」。
バスク料理とはどんな料理なのか、説明をもらった後、
早速1品目を作っていきます。
まずは、ピンチョスといえば、欠かせない「ヒルダ」から。
ヒルダはギンディ−ジャと呼ばれる青唐辛子のオイル漬けとオリーブとアンチョビを串に刺した定番のピンチョス。
その定番のピンチョスを作った後、現代のテクニックを使用した、新たらしい「ヒルダ」を教えて頂きました。
余談ですが、クリナリーセンターでは、「分子料理」という経験値ではなく分子レベルでなぜ美味しいのかを研究する機関があります。そこでは白衣を着てまるで科学者のような方々が日々研究を重ねています。
そんな分子料理を駆使した現代テクニックを使用すると、「ヒルダ」はこうなります。
ギンディージャの中に注射器で入れたペースト状のアンチョビが入っており、黒い砂のようなものはアンチョビです。
なんだかとってもオシャレになりましたね。
次に教えてくださったのが
Red peppers stuffing with cod 赤ピーマンにタラの身のペーストを詰めたもの。
とっても美味しく、帰国後にお伺いした、ご旅行中でどの食事が一番一番おいしかったかという質問に、星付きレストランやオンダリビアのヘルマンドなどを差し置いて、このお皿を挙げておられた方もいらっしゃいました。
つづいて、
Squid ink pearls イカスミの真珠?
直訳すると意味不明です。作り方はこちら。
油の中に加工したイカスミを注射器で落としていきます。そうするとなぜか丸まるのです。
初めての調理法にみなさん驚いておられました。
途中使用するイカを獲ったイカ釣り名人のビデオを紹介してくださいました。
この方はなかなか見れない、幻の名人なんだ~なんて言いながら。
エンリケさん!笑
先生の可愛い冗談のおかげで、和やかな雰囲気になります。
さて、Squid ink pearls 完成するとこうなります。
またまたオシャレな一品になりました。さすが現代テクニック。
そして
Cod in pilpil sauce メルルーサのピルピルソース
ピルピルソースとは、油と魚のたんぱく質でとろみをつけたソースでバスクでは頻繁に使われます。
部位を絵にかいて教えてくださいました。
手前はココチャと呼ばれる、のど元の部分。1匹から2枚しかとれず貴重な部位で、コラーゲンが多くプルプルです。
このメルルーサのピルピルソースは、前日にレストランで頂いていたのですが、みなさんこっちの方が美味しいと大絶賛。
最後に、cheese,quince jelly and walnuts
チーズと、クルミ、マルメロという果物のゼリーを使ったデザートを作ってくださいました。
とにかく試食が盛りだくさんで、しかもどれも非常に美味しく頂きました。
生徒さんはご旅行の最終日ということもあり、お疲れかと思いましたが、みなさん非常に集中し熱心に先生のお話しを聞いておられました。
3時間の研修後に感想をお聞きすると、疲れてきたな、と少し思ったタイミングで試食を出してくださったり、
ビデオを見せてくださったりと、最後まで飽きることなく研修を受けることができた。
たのしかったと、感想を頂きました。
確かに、同席させて頂きながら生徒さんの興味を引き付けることが非常に上手なこと、
途中冗談も交えながら、終始飽きさせることのない、テンポのよさを感じました。
また、今回のご旅行中から、この通訳、レストラン選びのアドバイスまで多気にわたるサポートを
共にしてくださいました、フードコーディネーターでもある山口。
本当に料理のことを知っていないと伝えることができない通訳を、してくださったと思います。
途中シェフの説明が足りないと判断されたところは山口さんの言葉で案内もあったほど。
非常にありがたかったです。
レッスンを終え外に出るときれいな夕焼け。
こんなきれいな夕焼けの見える、サンセバスチャンの環境の良さに改めて気づかされました。
海と山、自然にめぐまれ、雨がおおいため農作物がよく育つ。
独自の伝統的な食文化を大切にしながらも、新しい食への探求を怠らない。
美食の街サンセバスチャンの魅力は、これからもきっと世界中の方々を引き付け続けるのでしょうね。
エンリケさん、山口さん、素晴らしい研修をありがとうございました!(^^)!
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